クレイモデラーが使うアイテム
ポルシェのデザインを支えるクレイモデラーたちは、多種多様な道具を駆使して作品を形にします。金属製の刃やスクレーパー、細いかきベラ、木製のヘラ、ブラシ、筆など、このケースには100以上の道具が収められています。しかし、これらのツールは、一見しただけでは何のためのものなのかわかりません。これらはビジョンから現実への最初の作業を行うモデラーの仕事道具です。
クレイモデラーの役割
モデラーとは、スタイルポルシェのエクステリア・スタジオに所属し、未来のスポーツカーのクレイモデルを作っている職人達です。ケースにはそれぞれの職人が好みのツールを揃えているため、どのケースを開けても同じというわけではありません。作業スタイルに合わせて、職人たちはツールを自ら手作りで作ることもあります。
クレイを使う理由
ポルシェは、CADデータやバーチャルリアリティソフトウェアを使ったリアルなシミュレーションも行っていますが、スポーツカーの製作にはクレイモデルが欠かせません。その理由は、凹凸の典型的な相互作用が特に官能的なフォルムを描くためだけでなく、クレイモデルなら設計プロセスで求められる多くの変更をモデラーが手作業で迅速に済ませることができるからです。デザイナーの鋭い眼差しが求めるものを職人の手が具現化していくというわけです。
クレイモデルの特徴
一般にクレイ(粘土)モデルと呼ばれるものは、実際には工業用プラスチックです。この素材はスタジオのオーブンでぴったり60°Cに暖められ、バターのように柔らかくなります。この柔らかい素材を木と硬質発泡スチロールで作られたフレームに手作業で載せていきます。1:1のモデルでは、重いもので1,200kgほどのクレイが必要ですので基本的には1:3のモデルで作成。
モデラーはヘラを使ってクレイを削ぎ落とし、エッジの形を整え、表面を滑らかにします。重要なラインを強調したり、ヘッドライトや窓を平らに見せるためにテープやフィルムも使用されます。最終的に新たに2つの1:1モデルが作成され、これがシリーズ生産の基礎となります。この1:1モデルはフォルムが整えられた後、特殊フィルムで覆われ、塗装まで施されます。
クレイモデルでしか表現できないもの
クレイモデルの製作には時間がかかりますが、その工程は多くのメリットがあります。CADでは実現できない微妙な曲線や、平面では掴みきれない各部のボリューム感など、クレイモデルでしか表現できない要素が存在するからです。また、クレイモデルを利用することで、デザインプロセスにおいて必要な細かな調整を何度でも手作業でやり直すことができます。
クレイモデルの製作は、一見すると非効率に思えるかもしれませんが、その手間をかけることで、最終的なデザインの完成度が高まります。ポルシェのクレイモデラーたちは、これらのツールと技術を駆使して、未来のスポーツカーを形作っているのです。
クレイモデラーたちが使用する多種多様なツールと、クレイモデルの製作工程は、ポルシェのデザインの根幹を支えています。デジタル技術の進化が進んでも、手作業でのクレイモデルの製作は、デザインプロセスにおいて欠かせない要素です。ポルシェのクレイモデラーたちの技術と情熱が、未来のスポーツカーを形にしているのです。